「春」
用水路に棲まうメダカの群れより
外れるメダカがひとつ、ふたつ
次第に増えてはまた小さな群れとなり廻る
人のゆく宛は元よりあるか
堆積する時間感覚の中に生きる旧い者たちの
夢見る発展形のなかで逸れる者がひとつ、ふたつ
次第に増えては群れとなり立ち止まる
何に言われるまでもなくゐる確固たるわたくしは
何に言われるまでもなくゐてほしい貴方方の微笑みを
乞いて乞いてたまらず野の花に託す
誰に見つけられるでもなく
ぽつねんとして咲くわけでもなく
淡淡と生きて、生き抜いたどこかのそれが
わたくしに語りかける
燦然とした
何に言われるまでもなくゐる姿を以て
静かな日だまりを連れてくる