Emu’s blog

よくある日記

鈍い苦みが充満している

 苦玉を口の中ですり潰している。今ひとたび失ったものについて動かぬ頭でぼんやりと考える。この苦さでは目が覚めない。目覚めたくもない。少し前では考えたくもなかった。考えたくない時は抜け殻のような人と抱き合えばいい。揺られている腕の中で思い出す風景を反芻しながら生易しい夜を過ごすのだ。感傷的な気分から垣間見えるナルシシズムを呆れ顔で受け入れる。

 他者から逃げている。自己からも逃げている。感情には煩雑さがない。ただ筆舌に尽くしがたい何かがあるだけだ。関係性とそこにぶら下がる感情の多さを一括りの様態として捉えようとする場合に煩雑さを思わせる。一つ一つは明瞭な形を保持している。

 突き放してしまった元友人や元恋人のことが浮かび上がってくる。そっと離れていった人たちも人形のような姿で私の周囲に佇んでいる。顔はよく見えない。彼らを良く見ようとすれば盲になったような感覚に陥る。

 がらんどうのようなだだっ広い心の中で叫び声をあげる人がいる。始めはひどく反響して頭を痛めてしまうほどだ。やがて少しずつ小さくなっていき、何もなかったようにまた静かな状態に戻る。悲鳴をあげていたその人も、徐々に声を出す気力がなくなり、終いには黙りこくってしまった。跳ね返ってくるとはいえ、たった一人の声しか聞こえないのだ。「無意味だ」とその人は悟った。反論してくれる者もいない。

 のろのろと動く頭とは裏腹に脈だけが速い。何に怯えているのだろう。人の怒りに怯えているのだろうか。ではなぜそんなにも怒りに触れることが怖いのだろう。思い返してみても良く分からない。おそらくトラウマがある。いつくるか分からない良くない出来事に怯えながら、さらにその次の展開にも怯えている。ゲームではないのだから、読めば読むほど良いものでもないのは分かりきっていることなのに。

 結局あらゆる気力を失くして横たわる。鈍い苦みが充満している。