Emu’s blog

よくある日記

大きなけやきの木を眺めながら

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秋桜。秋の桜と書くけれど、桜のような風情があるかというと首を傾げる。確かに茎が細くてやや儚げではある気がするけど、群生するものだから何かと力強い印象を受ける。秋桜は、小学四年生の時に国語の教科書で読んだ『一つの花』によってまず印象づけられた。戦時中に、「ひとつだけ、ひとつだけ」が口癖の赤ん坊に、一輪の秋桜父親が手渡すシーンが印象的な物語。ひとつの命がかけがえのないものであるということを読み解くお話。私は模範解答通りの考えを述べていた記憶がある。先生に大変褒められた。しかし、戦争の陰惨さが描かれていたかもしれない話だけれど、その記憶はすっかり抜け落ちて、ただ秋桜が綺麗だったという部分しか覚えていない。私はそういう意味では出来の悪い生徒かもしれない。今も昔も平和ボケしているのだ。『ちいちゃんのかげおくり』だってそうだ。「かげおくり」の不思議な印象や絵の美しさだけが焼き付いていて、時代背景やストーリーはあまり記憶になかった。惨い話や印象は美しいものの記憶によって塗り替えられているのかもしれない。

なぜ秋桜の話を突然始めたかというと、昨日秋桜を見に行ったからであった。天気も良く、様々な色の秋桜を見ることができて大変満足な一日だった。とたった二、三行で昨日の話を終えてしまっては興ざめな感じがするので、その時の話を少しする。

私は大きなけやきの木を眺めながら、一人で周りをキョロキョロ見渡していた。これが彼と来る最後の「遠足」かもしれないのに、彼は呑気に仰向けになって眠っていた。

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人がキャッチボールをして遊んでいる。バドミントンのようなものをしている人もいる。シートを広げて彼と同じように寝転がっている人もいた。そんな中、ピンヒールを履き、レースのタイトスカートを穿いた女性が威勢良く助走をつけてボールを蹴っていた。時折ガクッと足首が曲がってしまうため、転ぶのではないかとひやひやしながらその様子を見守る。そんな私の心配をよそに、その女性は溌剌とした様子でボールを蹴っていた。どう考えても選択ミスであるその服装によって広場で一際目立っているように見えた。なぜか良いなと思う。

朝早くから来たかったのに、月に一度の通院日だったため、病院に行ってから公園に来たせいで、もうお昼だった。いつもなら受付を済ませて少し座っているとすぐに名前を呼ばれて秒で診察を終えられるのに、なぜかこの日だけは10分以上待ったし、その後に向かった薬局もやや混んでいたため、待たされた。ついていないなと思いはしたが、そんなにイライラするわけでもなかった。気分は悪くない。日差しが強く、少し動くと汗ばむ。10月とは思えない暑さだ。

ようやく起きた彼と秋桜を撮っていた。私はあまりこだわりなく撮る。一体何を撮っているのか、私はそこにある空気感を撮っていた。対象を見るのは写真を撮るときではなかった。写真も撮らずにぼんやりと眺めている時。だから、写真は構図も何もないような、本当に子どもがテキトウに撮ったようなものばかりでふざけていた。一方、彼は写真を撮る時もきちんと対象を見つめていた。構図もやや考えているように思われた。実際、ここに載せる写真はおそらくほとんど彼が撮影したものだろう。私の写真は彼の撮ったものと比較してしまうと見劣りするのだった。

移動して、さらに秋桜を撮る。いろいろな話をしていたけれど、覚えていない。隣のサイクリングロードを自転車が走る。二人乗り用の自転車だ。「いいな」と思ったけれど…うん、もう言わない。

入園した直後に食べたソフトクリームがあまりに小さい上に美味しくなくて、買ったことを未だに後悔していた。ソフトクリームを食べている人を見る度に「あんなソフトクリームで満足できるのか」なんてことを思ってしまう。コーンだけは美味しかった。でも、北海道や阿蘇で食べたソフトクリームには敵うわけがなかった。なんでこんなにソフトクリームに固執しているのかも自分では良く分からなかったのだけど、出くわす人が手に持っていると、どうしても考えてしまうのだった。

自動販売機で彼と一緒に買ったドトールのカフェオレはなんとなく美味しかった。暑さにやられて水分を欲している体に冷えたカフェオレを与えたからだろうし、皆がゆったりと過ごしているこの空間の居心地の良さが味をさらに良くしていた。普段飲めばなんてことないただのコーヒー牛乳だけど、それがこんなに美味しく感じられる時もあるのだなと思う。

日がもう傾いていた。徐々に涼しくなってくる。広い公園だったので1時間前から出口を目指して歩いていたのだけど、まだ到着しなかった。途中、コスプレイヤーが写真撮影しているのを珍しそうに観察したり、退屈そうに店番をする店主を少し嫌に思いながら手作りと書かれたガラス細工のいろいろを眺めたりした。季節外れの風鈴の音が心地良かった。

1時間半かかる帰りの電車でもやっぱり彼は眠っていた。やはり普段激務で疲れているんだろう。私はスマホでネットをぐるぐると巡回する。はてなブログでいろいろな人のブログを見るのにハマっていた。面白そうな人を見つけると、夢中になってしまい、時間やその空間にいることを忘れてしまった。

帰宅するとすぐさま私は家事を始める。彼にもあれこれと指示するも、彼は休みたいと駄々をこねる。結局畳んだ洗濯物を片付けてはくれなかったし、散らかしたテーブルもそのままにされた。だらしない。本当にその面だけは嫌だった。うちの家族は皆がきびきびと動くものだから、私はのろのろとしているように映っていたのだけど、彼と私で比較すると、彼は私以上にのろまだった。疲れているのは分かるけど、私も疲れているし、私より働いているからといって家事を全くせずに押し付けてくるのは本当にどうかと思う。そこは彼が私に対して甘えている部分でもあった。愚痴を書き始めると止まらないのでこの辺にしておくけれども。

ご飯を食べて、映画を一緒に観たけれど、私はやっぱり映画に集中できなくてズレてしまっていた。

そして夜見た夢で、私は全てを投げ出したいと考えていたみたいだった。もう、昔のような温かな家庭は実家に帰ってもないし(家族が揃わないから)、ここにもない。新たにつくるしかないのだけれど、まだまだ叶いそうにないことに夢では絶望しているようだった。夢ではひとりだった。ひとりだったけれど、目覚めるとひとりではなくて、ちゃんと見てくれる人がいるから、私はまだ発狂することなくこの日常をやり過ごせているんだろうなと感じた。あなたのおかげで。

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